横笛と尺八作りに於ける調律数式を模索して

投稿者   S.Tさん

結論からいうと竹で笛を作り限り調律数式が実用になることはないようですが、
考え方の基礎は大変参考になりました。
 ご興味があるかと思い、まとめてみました。


■参考文献
『楽器の物理学』 N,H. フレッチャー, T.D. ロッシング
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4431709398/ref=sr_aps_b_/250-8610595-6423466
『基礎音響工学』 コロナ社
http://db2.dcube.co.jp/coronasha/search/FMPro?-db=coronasha%5fdb.fp5&-format=detail.html&-sortfield=%8f%89%94%c5%94%4e%8c%8e%93%fa&-sortorder=descend&-op=cn&%8f%91%96%bc=%89%b9%8b%bf%8d%48%8a%77&-max=20&-recid=12631245&-find=


 これを理解するのに数学の復習から行いました。
 音響工学では電気(交流)も音波も周波数を持った波であることに注目し、電磁
気学と同じ手法で定式化しています。
 歌口部分と開いた指孔部分では共振の元になるカルマン渦が発生しています。
渦の発生は。電磁気学ではコイルと同じです。
 また横笛の歌口左側の閉管部分は空気をためる部分になっています。電磁気学
ではコンデンサと同じです。
 コイルもコンデンサも交流に対しては抵抗をしめし、インピーダンスと呼ばれ
ます。つまり直管と違い木管楽器では息が渦となってインピーダンスが発生して
いる=端補正が開口端補正より大きくなっているのです。そして指孔の端補正値
が管長の端補正値より大きいのも管長(筒音)の場合管尻では開口端補正(0.61r)
だけですが、指孔の場合渦のが発生で端補正が管頭側と同様必要になるからです。

 さてここでコイルとコンデンサは周波数特性を持っています。コイルは周波数
が高くなると抵抗があがります。コンデンサは周波数が高くなると抵抗が低くな
ります。
 つまり甲の音(オクターブ上げた場合)では乙の場合と端補正値が変わります。
つまり同じ指使いで息を強く吹き込んだ時、オクターブがずれることになるので
す。今回私が悩んだのはここでした。
 尺八・フルートはテーパ管にしていますが、竹の横笛ではこの方法はとれま
せん。とってもよいのですが、塗りをしない竹の音を生かしたいと思っている 
ので。また指孔ごとの端補正値が微妙に違うのも未解決ですが、これはまだ指孔
を削ることで微調整が可能ので対応可能です。

 先ほどのコイルとコンデンサに戻ると、横笛の場合コイル(歌口)とコンデンサ
(歌口左部=風袋)が周波数に対して一定になるような合成インピーダンスになれ
ばよいことになります。
 ここでコイルのインピーダンスは巻数(歌口面積)に比例し、コンデンサ(風袋)
は逆数に比例します。また並列抵抗の合成値は、a,bを各抵抗値とすると
 a+b = (a^-1 + b^-1)^-1
になります。


 これを計算した英語論文を見つけました。

http://www.chrysalis-foundation.org/flute_tone_holes.htm
http://www.phy.mtu.edu/~suits/fingers.html
 特に後の方は式をtanやsin,cosを使わず計算しています。また上記の楽器の物
理学にも波動方程式から展開した式がありました。いずれも解いてみましたが、
実際の数値と一致しません。


 ただし

http://www.phy.mtu.edu/~suits/fingers.html
For a fipple flute (e.g. a recorder) the correction at the mouth can be
approximated by

Lb = 2.3 a^2 / (area of fipple opening)^(1/2)
 

とありました。尺八の参考になるのではないでしょうか?

結局工程としては、風袋に木タイプの紙粘土をつめては周波数を測定すること
で適当なサイズを見つけることにしました。
 オクターブはほぼ正確にとれるようになりました。

 残課題は指孔ごとに違う端補正の予想方法と、これが大きいのですが高音が出
にくいことと吹き心地をよくすることです。