第二研究室

 **歌口加工**
 
 

歌口は尺八の音源となる、重要な部分です、

唄口で発生する振動波のメカニズムは、次の様に考えられます、

まず口から出た空気の束は、唄口の先端をかすめて気流となって流れます、この気流は唄口の外側もしくは内側のどちらか一方向に流れ、流れている側は気圧が高くなります
そして流れていない片方とに気圧の差が生じてきます、そのため気圧の高い気流が、気圧の低い、もう一方側へと引き込まれ、気流の流れが逆になります、またそこに気圧の差が生じると、再び気流の流れは逆転します、この繰り返しが、唄口の内と外にカルマン渦を発生させ、疎密波を作り出します、

この疎密波の脈動は管内部の空気柱の長さに同期した、ある一定の振動サイクルを生み出します、

(口から出た空気の束は、唄口の先端をかすめて、内と外どちらかに流れを偏らせる必要があります、ちょうど真ん中だと気圧の変化が生じないので振動サイクルも、うまく発生出来ず、尺八も鳴りません、必ずどちらか側(外側か、内側)に偏っている状態、これが、よく言われる「内吹きか?外吹きか?」と言う事です、尺八の筒音で説明しますと、

音の発生源である唄口から、飛び出した空気の疎密波が、管内を伝わって、管尻に到達すると、

尺八の長さで決まる振動波長の節となる部分で、疎密波が反射され、(一部はそのまま外へ放出され、どこかで振動波長の節が物とぶつかって、その反射波が再び管内へと戻って来ます、回りの環境が反射されやすい場所では音の増幅効果が高められ尺八はより大きな音を発する事になります)
唄口へと戻されます、その疎密波が再び唄口側の節に当たると、疎密波が反射され、管尻へと戻されます、このように、管内に伝わる疎密波は、尺八の内部で行ったり来たりする事になります、この事によって、ある一定の共振状態が作り出され音が増幅されます、つまり尺八の長さで決まる筒音が大きい音として、耳に伝わる事になるわけです、

もう一つ、付け加えると、振動波の節に当たる部分は、1波長の中に2カ所あります、それは1波長の後ろの部分と、もう一つは1波長の中間部分です、ここで疎密波が反射されると、共振される音のサイクルは2倍音となり、筒音に対して1オクターブ高い音(倍音)が作り出されます、

さらに手孔穴の効果について説明しますと、それぞれの運指によって作り出される、波長の長さが変わって来ますので、その波長に基づいた空気柱が、共振サイクルを生み出し一定の音と倍音を作り出す事になります、

オクターブ高い音を出すために必要なのは、空気の流速です、流量ではありません
流速は音域、流量は音量と密接に関係します。

例えば大甲を出すとき、気張って強く吹いても空気の音(シユー、シユー)だけが耳につき、あまり実のある音にはなりません、同じ強さ(腹筋の)で吹いても、唇の締め具合で(ノズルの面積)によってそこから吹き出す流速が変わります、大甲を吹く時には、流速を上げる事が必要ですが、この時にノズルを締めていく事が一番のポイントになります、さて空気の束が細くなっていく訳ですから、ベストポイントに楽器を当てておかないと空気の束が唄口に当たらなくなったり、効率が落ちてしまうことがあります、しかし尺八を演奏する中で、メリ吹き、カリ吹きさらにはユリ、ナヤシ等と様々な吹き方などもある中で、それに受け答えるべき、もっとも理想とされる唄口の形状を探し出さなければなりません、

そこで唄口の形状の条件をいくつか提示してみたいと思います、

まず口から出た空気の束は、唄口の先端をかすめて気流となって流れます、この気流の束を効率よくまとめる為には、流れを形成する道筋を作る事が必要です、例えば一杯になったダムの水をダムの巾全体からこぼすのか、中央部分に溝を作りその部分にだけ集中させてダムの水を吐き出すのかの違いに似ています、

 

唄口の湾曲

乙音と甲音では空気の流速に違いがあるわけですから、先ほどの例えで中央部の溝の巾は乙音では広く、甲音では狭く作る必要があります、

溝の深さ

 メリ吹き、カリ吹きは先に説明した振動波長に関係します、唄口の頭部は顎と唇によってそのほとんどが塞がれています、唄口と唇との間に出来るわずかの隙間で振動波長が決定します、そのため、この隙間の間隔が、メリ吹き、カリ吹きによって変化し、その結果、唄口側の振動波長の節の位置が微妙に移動するので、振動波長の長さが変化し、結果として音程に変化を生じさせる事となります、唄口に要求される形状は、メリ吹きの顎をひく動作、カリ吹きによる顎の突き出す動作、これらの顎の動きがスムーズになる、唄口頭後部の形状が必要です

唄口後部の形状

ユリ吹き、ナヤシ吹きは、唄口に対して、左右の動きで音程を微妙に変化させる吹き方です

これもまた、唄口と唇と間に出来るわずかの隙間を横からの角度で変化させ、音程に変化を与えます、唄口に要求される形状は、ナヤシやユリの顎を左右に傾ける、顎の動きに合わせた、唄口頭部の左右の形状です、

 

唄口頭部の左右の形状

唄口舌面と側面の角度

 唄口頭部に顎を乗せ、息を吹き付けた時、その息の束が、唄口の先端に当たって、さらに唄口舌面に平行に流れる、このようなベストポジションは、唄口舌面の角度と唄口側面の角度で決めることが出来ます、この両者の角度はお互いに干渉し合い、一方だけの、極端な傾きは、他の角度のバランスを崩す結果になります、また、唄口舌面と側面の角度の比率は、吹奏者の顎の形、唇が作る息の吹き出し角度等、吹奏者の個性によっても、要求される形が変わって来ます、尺八の音が出せない理由の一つに、顎の形にかかわる個人差に起因した問題があり、ベストポジションが取れないと言った原因が考えられます、先進的な製管師の中にはこの問題を解決するため、斬新的な構造を持つ唄口を開発すると共に、形状の違う沢山の唄口サンプルから、オーダーメードでの製作や、既存の楽器を、演奏者の口元にアジャストする「クリニック」技術をも発展させています、

唄口舌面と側面の角度

吹奏者に個人差がある様に、竹材自身にも、太い竹、細い竹、甲高の竹、扁平な竹、楕円形の竹、とさまざまな形の違いがあります、従ってこれらの形にあった、一番理想に叶う形を見つけるとすれば、コレはもう自分(吹奏者自身)で作るしかありません、これから示す唄口の形はあくまで、標準的な太さと形で表現しています、自分に合う形の参考にしてください、 

唄口の構造と角度

 製作手順
 

唄口頭部の切断 竹の7節目の成長帯の線から3mm上を切断します

唄口の舌面となる表面を決めます、上から管内を覘き、管尻側の曲がり具合を確かめます、表側としたい面が決まったら、管尻から唄口まで、直線の印をつけます、この線に沿って、手孔穴と唄口の中心が一線で決まります、

唄口舌面を斜めに削ります、竹を側面から見て、その角度は60度前後です

唄口頭部を斜めに削ります、顎を乗せて唄口に息を吹きつけ、息のあたりと、息受けの感触を確かめます、

唄口舌面に角(補強材)をはめ込みます、長年使い込んでいるうちに、息の露による竹材の劣化防止の為と、息受けをより鋭角にして、音が出やすい構造にする狙いがあります、またこの部分に角が入ることにより、尺八の顔として、形を整える効果があるように思います、顔の形がいろいろある様に、唄口の形にも、琴古流や外山流があり、その特徴や効果が違います、造形美から考えると、尺八に似合う、もっと他の形があってもいいはずです、私はそんな考えから、時々図3の形を使うことがあります、唄口の先端部が琴古流より、巾広く出来る為、息受けの効果が期待されます、また角の形が直線的で加工しやすく、形が大きく出来ているので、たとえば肉厚の薄い竹や細い竹に舌面を削っていて、成長帯の下の薄い部分に穴が開くことがあります、この様な竹材には、大きな逆三角形の、角を埋め込む事により、その部分が覆われ補修された形になります、手作りの尺八製作には、こんな、遊び心と、自由な発想が大事だと思います、

唄口後頭部の顎あたりを削ります、尺八のメリ吹き、カリ吹き、による顎引きや顎出しの動きをスムーズにする為、余分な当りを滑らかに削り取ります、

唄口頭部の左右の顎あたりを削ります、コレはユリやナヤシと言った、首振動作をスムーズにする為、余分な当りを滑らかに削り取ります、

仕上げは、削った所全てに瞬間接着剤を塗布し、乾いた所で、細かいヤスリをかけます、仕上げはポリマー等の、超細かい磨き材を使い、ピカピカに磨いて完成です。

歌口舌面と角
歌口舌面に角(補強材)をはめ込みます、長年使い込んでいるうちに、息の露による竹材の劣化防止の為と、息受けをより鋭角にして、音が出やすい構造にする狙いがあります、またこの部分に角が入ることにより、尺八の顔として、形を整える効果があるように思います、


歌口の形状
顔の形がいろいろある様に、唄口の形にも、琴古流や都山流があり、その特徴や効果が違います、造形美から考えると、尺八に似合う、もっと他の形があってもいいはずです



    琴古流                都山流               秀竹流
秀竹流の特徴長唄口の先端部が琴古流より、巾広くなる為、効率的な息受けの効果が期待されます、また角の形が直線的で加工しやすく、形が大きく出来ているので、たとえば肉厚の薄い竹や細い竹に舌面を削っていて、成長帯の下の薄い部分に穴が開くことがあります、この様な竹材には、大きな逆三角形の、角を埋め込む事により、その部分が覆われ補修された形になります、手作りの尺八製作には、こんな、遊び心と、自由な発想が大事だと思います、


製作手順

上下管を繋いで、歌口側から管内を覘くと、管尻側の穴が三日月の形に見えます、管尻側の曲がり具合で、この三日月の形は、丸に近い物や半月の様な物と色々ですが、この三日月の、円の欠けている側が尺八の前面になります、


上管と下管に、尺八の前面となる、手孔の位置と歌口の位置を印します、中心線に沿って手孔と歌口が一直線になる様に配置してください、


歌口の削る面と、中心線が、はっきり解る、印しを付けます、


唄口頭部の切断 竹の7節目の成長帯の線から3mm上を切断します


唄口舌面を斜めに削ります、竹を側面から見て、その角度は60度前後です、最初は、荒いヤスリで、大体の形を決めます。


仕上げは中ヤスリで、形を整え、歌口面を、きめ細かく修正します


削り込む度合いは、図の様なイメージにします


次に、唄口頭部を斜めに削ります、顎を乗せて唄口に息を吹きつけ、息のあたりと、息受けの感触を確かめます



歌口後頭部の顎あたりを削ります、尺八のメリ吹き、カリ吹き、による顎引きや顎出しの動きをスムーズにする為の、余分な当りを滑らかに削り取ります、後部の成長帯に、顎を乗せて、顎に当たって、不具合な部分を、やや丸みを付けて、角を落としてください、
歌口頭部の左右の顎あたりを削ります、コレはユリやナヤシと言った、首振動作をスムーズにする為、余分な当りを滑らかに削り取ります、

成長帯の辺りに、鉛筆で水平線を描きます
水平線に、三角に削った角を、乗せて、角の左右の線を印します


線に沿って角を差し込むホゾ穴を削り込みます

削り込むホゾ穴は、舌面に対して直角です

歌口の角に、飾りの縁取り(金、銀、飾り)をする場合は、角の外側に巻いて差し込むので、外形がさらに大きく削る事になります、

縁取りの金、銀は、折れ目をつぶして、隅を鋭角にすると、見た目がよくなります、

角を差し込んで、瞬間接着剤で、固定します

表面の余分な部分は、鋸で切り離します

管内側も、出っ張り部分を削り取り、ペーパーで仕上げます。

前面も、平ヤスリで、仕上げます

最終的には、先端部分をより鋭敏に削り込み、舌面全体に瞬間接着剤を塗布し、乾いた所で、細かいヤスリをかけます、仕上げはポリマー等の、超細かい磨き材を使い、ピカピカに磨いて完成ですが。???
まだ、角の先端は、鋭く削り込んでは、いけません、管の地付け作業で、先端を傷つける恐れがありますので、歌口入れの作業は、とりあえず、写真のイメージで終了しておきます。、

最後に、型尺棒を歌口から、挿入してみて、スムーズ(少しゆるい位)に入れば準備完了です、